日々是好日。

つれづれなるまゝに、日ぐらし画面に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば、あやしうこそ物狂ほしけれ。

研究者ということ

最近、本国日本ではノーベル賞受賞者のコメントに関して結構話題になっているみたいですね。
インターネットを通じてしか情報が来ないし、当人にお話を伺っているわけではないので、どこまでが事実でどこからが編集・脚色なのかはわからないけれど、今ある情報だけで私見を述べたい。

某受賞者は日本での研究土壌の貧しさに意見しているようですね。
その点は認めます。はっきり言って日本は研究者に優しくないと思います。
ここで研究者っていうと、一般の人は理系を思い浮かべるのでしょう。
白衣を身に着け(ちょっと前は割烹着?)、実験室があって…

でも…研究者っていうのは文系もいるんです。
この方「日本は文系社会で文系のほうが給料がよくて…そういう国は途上国」といったようなコメントもしていたかと思います。
とんでもない!!!このコメントで私は彼に大きな不信感を得ました。
だって、絶対理系のほうが優遇されてるもの。奨学金にしたって研究職の数にしたって間違いなく理系のほうが多い。
文系には助成もなければ民間研究所だって少ない。だからこそ「文系が自由に研究できる土壌こそ先進国」だと思ってます。

だってそうでしょ?途上国は技術革新(理系)や医療改革(理系!)ばかりに目を向ける。それが国益に直結するから。
でも途上国で哲学や文学、法理論や社会学なんて発達してます?してないんです。
そういうのってやっぱり余裕がないとできないのですよ。明日の命もわからない人々に法律を守りましょう。
法律とはかくあるべきですって説いたところで、「それ食えるの?金になるわけ?」となるのが関の山。

そして文系軽視の日本においてはやはり文系科目は馬鹿にされます。「ただの理想論じゃん。金の無駄」といったように。
確かに、画期的な発明もなければ技術革新に直接関係するわけではないし、答えが明確にあるわけではない。
そういった意味で結果が見えにくいから無駄に思われるのも仕方ないのかもしれない。

それでも私が犯罪学をやっているのは
「ゼロにはできないけれど、少しでも犯罪を減らしてより多くの人が幸せになれる世界を実現したい」
っていう理想があるから。
犯罪は加害者も被害者も不幸にする。社会さえも…
だからその不幸をできるだけ除くことができれば相対的に幸せは増えるはずなんです。

それなのに「文系は意味がない」「金の無駄」「生活に必要ない」なんてレッテルを貼られてしまう。
先ほどの「文系は…途上国です」という件に関しても結局、理系>>>>文系という位置づけなんですよね。

職に貴賤はないのと同様、文系・理系に優劣はないと思っています。
私は犯罪学・法学の分野なのでその範囲内でしか言えないのですが、理系がなければ成り立っていないし、
かといって文系がなければ理系も成り立たないと思っています。

罪がらみの身近な例でいえば、捜査・裁判でしょうか。
裁判には法律の解釈・証拠の吟味・正義の判断が必要になるかと思います。
それは文系の領域なんでしょう。法の解釈は法学・哲学の分野ですし、正義の判断はたいてい哲学に基づきます。

さて…証拠の吟味は?
そうなのです。ここで理系の登場。科学捜査、例えば遺留品鑑定、DNA・血液鑑定なんてのは専ら理系の領域です。
でも、なぜ鑑定するのか?
それは犯罪だから。犯罪でなければ鑑定はいりません。だって道端に落ちている唾液や排せつ物、いちいちすべて鑑定しますか?
しないんです。なぜかって、犯罪に関連がないから。もし今後、道端に排泄物などを放置することが重罪になったとしたら、それは犯罪ですので捜査・鑑定対象になります。何が犯罪かを決めるのは法学・立法(政治)・道徳(哲学)の分野。
そこから要請されて初めて理系の本領発揮!

理系の鑑定技術の進歩により証拠の信用性がUPして裁判が迅速になる ←理系の成果!
証拠の確実性を担保するために技術革新を促す ←文系からの要請(文系による動機づけ)

こうやって持ちつ持たれつやっていくのが学問だと思う。
それにも関わらず、理系より~、文系なんて所詮… という風潮そのものに憤りを感じます。

WHOが暴力犯罪の研究をしていたり、安全・安心なまちづくりを推奨したり
そうやって国際舞台は理系と文系の枠組みを超えて包括的な取り組みを始めているのに何をぬかすか…と思います。

また、彼は日本に見捨てられたという感想をお持ちで国籍変更をされたようです。
私自身母校からぞんざいに扱われ、海外に逃げ出した身。わからなくもないです。
でも、そういう扱いをしてくれたおかげで、私は世界に出られることができた。
私を育ててくれたのはやはり日本だし、そういう日本を変えたいと思っているのも事実。
負のエネルギーを原動力に換えるのはやめたいので、もう恨まないことにしました。

ただ、私も人間。やはり、母校に対する不信感はぬぐえない。だから相当なことがない限り母校には戻らないはず。
でも同時に戻りたいと思ってる自分もいるから不思議。

彼が日本国籍を捨てて某国籍を選択したことに何の意見もない。
彼の選択、意思だから。でも、日本を、古巣を名指しでここぞとばかりに攻撃するのは大人げないかなぁ。と思います。
一番の復讐は興味すら持たないこと。気になるのは、むかつくのは未練があるからでしょう。

見向きもしない。それが一番のダメージだと信じてます。

いつか私もそんな風になりたい。そうなるためには自分自身に自信をつけることだろう。
と、いうことで勉強頑張ります。